中国の東端、ポー海に面した山海関が「万里の長城」の出発点だ。 高麗族やモンゴル馬賊の侵入を防ぐため秦の時代に建設された城壁は、 北にゴビ砂漠、南には祁連山脈が連なる河西回廊を西へ、 なんと6,350kmに及ぶ城壁は回廊のノドもと嘉峪関で壮大な旅が終わる。 北京を出発して4日目「万里の長城」西端の砦、嘉峪関に着いた。 “宇宙から確認できる唯一の建造物”といわれる長城の砦は息を飲む美しさ。 2200年の歳月を感じさせない圧倒的な存在感が迫ってくる。 この地に辿り着いた旅人をパラレルワールドの世界に誘う。 2000年前の早春。ゴビ砂漠を越えた北方の戦闘騎馬兵3000が 嘉峪関の東門に雪崩込んだ。 すでに狼煙で敵の来襲を察知していた始皇帝の守備隊は 僅か600名だが、なだらかに傾斜した東門に油を流し追撃の構えを整えた。 門を蹴破ったハンの軍馬は油に脚をとられ、折り重なって転げ苦戦する、 それを乗り越え天下一雄関に殺到するが、コの字に囲まれた門前で絶句。 高さ11mの城壁から熱湯、投石、弓矢の嵐にさらされ敗退してしまう。 ガイドの講釈に思いを馳せ、フッと城外に視線を巡らせ我に返った。 城壁に迫る工場の黒煙がモクモクと青空を曇らせている。 21世紀、天下一と恐れられた嘉峪関は、近代化と呼ぶ大軍に囲まれていた。 かつて外敵を防いだ万里の長城は、大気汚染という見えない敵と対峙している。 2007年新規登録された2件を含め、中国の世界遺産は35箇所になる。 北京を筆頭に約30%が世界遺産を中心に巨大都市へと発展を遂げてきた、 しかしその代償として激しい環境破壊に侵されている。 文化の保存と文明の発展、人類はいかにして両者を共存させるのか・・。